


アルフォンス・ミュシャ『トリポリの姫君イルゼ』挿絵【第1部第3章】(両面 No.37&38)
ひとたび心に灯った面影は、季節のうつろいにも消えず、やさしく胸を満たし続ける──
春の湖畔、ジャウフレはふとした瞬間に、あの「名も知らぬひと」を思い出していました。風のように現れ、炎のように去ったそのひとの姿を。
作品解説
本作は、主人公ジャウフレとエイマルディーヌが「愛とは何か」を語らう場面に基づく挿絵で、物語の中でも特に詩的な内省が描かれます。ページ左下には、花咲く枝に腰掛ける女性が描かれ、彼女の視線の先には水の中から現れるような幻想的な女性像が浮かびます。これはジャウフレの記憶、あるいはエイマルディーヌの語る「理想の男性」像を視覚化したものであり、想いの中の人物が自然の装いをまとって登場する、象徴的な構図となっています。
画面上部にはアール・ヌーヴォーらしい花の装飾があしらわれ、物語の繊細な感情の流れと調和します。ミュシャならではの流麗な線と植物モチーフが、幻想と現実のあわいを美しく縁取っています。
38ページに描かれた女性像は、純粋で神秘的な「愛の化身」として登場し、柔らかな光のなかにたたずむその姿は、まるで観る者の心に直接語りかけるかのようです。画面いっぱいに広がる葡萄のような泡と光は、感情の解放や魂の浄化を象徴しているとも解釈できます。
この2ページは、恋の芽生えとともに揺れる心の風景を、静かに、しかし深く描き出した詩的世界の結晶です。
この作品は、1901年にドイツ語で出版された豪華挿絵本『トリポリの姫君イルゼ』に収録された1枚です。
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作品名:「トリポリの姫君イルゼ」より挿絵
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画家:アルフォンス・ミュシャ(Alphonse Mucha, 1860–1939)
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制作年:1901年
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技法:カラーリトグラフ(両面印刷)
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サイズ:約 30×20cm(紙面)
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