


アルフォンス・ミュシャ『トリポリの姫君イルゼ』挿絵【第1部第4章】(両面 No.49&50)
「夜ごと夢のなかで現れる、ひとりの幻影──彼女は芳しい香りのようにジャウフレのまなざしと心を包みこみ、もはや逃れられぬ存在となっていた。」
物語が第1部第4章に入ると、ジャウフレの心は一層深く幻視の世界にとらえられていきます。修道士との対話を通して、彼自身もその感情の異常さを自覚し始めますが、彼が思い描く女性の姿は、夜ごとの幻のように彼の傍らに現れ、離れてはまた戻ってきます。その存在は、もはや彼の信仰や理性では振り払うことのできない甘美な執着となっていたのです。
解説文
第4章は、主人公ジャウフレが経験する「霊的恋愛」の深化を描いた象徴的な場面です。49ページでは、ジャウフレが神への冒涜を否定し、夜に眠れぬまま聖典を読み続ける姿が語られます。彼は「聖なる愛」を学ぼうとしますが、その実、彼の心はかつて森で出会った幻影の女にとらわれているのです。
50ページでは、その幻影が五感を通して彼を魅了する様子が描写されます。彼女の姿は昼よりも夜に濃く現れ、ジャウフレのまわりには香り、音、色が幻想のように満ちあふれます。もはや現実と幻想の境界は曖昧になり、「すべての思考と言葉が彼女のためでなければ、意味をなさない」というように、彼の全精神は彼女に奉仕しています。
この章は、ミュシャによる繊細で幻想的な装飾とも響き合い、19世紀末象徴主義の主題──愛と夢、信仰と誘惑、魂の幻惑──を体現しています。
この作品は、1901年にドイツ語で出版された豪華挿絵本『トリポリの姫君イルゼ』に収録された1枚です。
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作品名:「トリポリの姫君イルゼ」より挿絵
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画家:アルフォンス・ミュシャ(Alphonse Mucha, 1860–1939)
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制作年:1901年
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技法:カラーリトグラフ(両面印刷)
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サイズ:約 30×20cm(紙面)
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